ドクターコラム
鼻のヒアルロン酸注入の失敗例と失敗を防ぐポイント
2024.10.07
鼻の整形
ヒアルロン酸注入治療とは?
ヒアルロン酸は元々動物の体内にある保湿成分です。注入剤として使用されるヒアルロン酸は、人工的に製造されているものであるため、動物由来のものと違い感染症等が紛れて移るリスクがなく非常に安全性が高い製剤となっています。
また、ヒアルロン酸注入治療はメスを使うような外科治療ではないため、ダウンタイムがほとんどなく手軽で非常に人気の高いプチ整形治療で知られています。
しかしプチ整形治療ゆえに失敗とは無縁なほどに思われがちですが、美容医療においても一般的な医療行為同様にリスクを伴う治療であることを強く認識しなければなりません。
つまり、美容医療では自分の理想とは違う結果となる失敗や、原状回復できないくらい重度の後遺症へつながる失敗があることを忘れてはなりません。
鼻のヒアルロン酸注入について
鼻とお顔のバランスを診て、足りない部分を埋めるようにヒアルロン酸を注入します。
鼻のヒアルロン酸注入とは、理想の鼻を実現するために鼻の皮下に細い針の付いた注射器でヒアルロン酸を注入することで、鼻を高くしたり、鼻筋をつくるプチ整形施術の一つです。
鼻のヒアルロン酸注入では、効果のメリットだけではなく、注入によるリスクというデメリットも存在することをしっかり認識してもらい、失敗を防ぐポイントも踏まえて解説していきます。
鼻のヒアルロン酸注入治療で知られている失敗例
施術直後、短期経過
・理想の形にならなかった
・仕上がりのバランスが不自然
→横顔での前額と鼻根、鼻先と鼻根の高低差のバランスが悪くなった
など
施術後の中〜長期経過
・何度も注入を繰り返したことで鼻が太くなった
など
ヒアルロン酸注入の失敗を防ぐポイントは、第一に治療の「リスクを知る」ことです。その中でも「医師側の要因」、「患者様側の要因」の両方の視点でバランスよく検討し対策できることが必要です。
医師側が要因となるリスク
・そもそも医師によるカウンセリングが不十分。
→患者様の要望に対し、患者様の希望を「真摯に聴く耳」があるか?。医師選びの基本。
・医師の経歴
→治療に対する知識、経験、スキルの有無。形成外科専門医の資格有無は医師選びの重要なポイント。
・血流障害など、重篤な合併症が生じるリスクがあることの説明がない。
→丁寧でわかりやすい説明ができる医師を選ぶべき。
患者様側が要因となるリスク
・医師のカウンセリングをうけていない。
→カウンセラーだけの説明を聞くだけで治療を受けることを決めないようにする。
・自分の希望が不明瞭であり伝えることができない。
→理想像や希望を伝えることができるように準備を怠らない。施術直前に悩まないようにする。
・美容医療のリスクを理解しない、軽視する。
→美容医療といえどリスクを伴う。術後の血流障害など、重篤な合併症にいち早く気づくことができるための知識が必要。
医師選びの失敗を防ぐポイント
ヒアルロン酸注入における医師の術前説明が不十分であったり、そもそもの医師のスキル不足が大きく関与しています。
医師は患者様の理想の鼻の形を実現するために尽力することは当然です。しかし患者様の鼻の形態次第では解剖学的に対応困難なことがあるため、医師が患者様の要望に必ずしも応えれるわけではありません。そのため医師には施術の適応の可否を判断できる知識と経験が不可欠です。もし患者様から現実的に不可能な要望があるならば、安請け合いでなくはっきりとお断りし、正しく導く誠実さが必要です。さらに施術可能な場合であっても、適切なヒアルロン酸製剤の選別、適切な注入量、適切な注入部位や注入層など、患者様の要望に応えられるだけの医師のスキルと経験が必須です。
患者様自身で失敗を防ぐポイント
医師だけでなく患者様にも注意して頂きたいことがあります。
それは、カウンセリング前に医師に伝える希望の鼻のイメージを整理し事前準備を怠らないことです。患者様が言葉で発したイメージが必ずしも医師が受け取るものと一致するかどうかはわかりません。そのため、見本となる写真などのイメージ画像がある場合は視覚的に確認しやすくなり理想的です。
しかし、患者様が「少しだけ鼻を高くしたい、大きな変化を望まない」と言葉で伝えていたにも関わらず、好きなモデルや有名人の理想的な鼻の画像をみせてもらうと、患者様の言葉の内容と相違して、しっかりとした鼻筋、ホリが深く見えるほどの高い鼻である場合があります。
このように、患者様の言葉で発する内容と持参されたイメージ画像の内容が一致しない場合は、そのギャップが埋まるまでカウンセリングに時間を費やす必要があります。
そのため、医師は患者様の深層心理を汲み取り本当の希望を引き出せるように「聴く耳」を育てることが必要です。逆に患者様は、常に自分を客観視し本当の自分の理想を具体化し迷わず自分の言葉で伝えれること、増して施術直前に悩むことがないように入念に事前準備をすることが不可欠です。
血流障害について
鼻のヒアルロン酸注入で危険で重篤な合併症の1つに、注入したヒアルロン酸による血流障害や血管塞栓があります。注入したヒアルロン酸が周りの血管を圧迫し血液の流れを塞き止めてしまったり、誤って血管内にヒアルロン酸が誤注入されてしまうと、ヒアルロン酸が血管内を詰まらせてしまい血流障害を起こします。血流障害を放置すると、その血流に支配されている組織に酸素供給がなされないため最終的に組織の壊死(組織が死ぬ)や失明など原状回復できないほどの後遺症を残す原因となります。
血流障害は、主に施術当日から術後早期に生じやすい合併症の一つです。ヒアルロン酸注入治療は皮下の解剖を直視できずに行う施術であるため、術者の解剖の知識、経験、感覚及び感性を頼りに慎重に行われることになります。しかし医師がどんなに細心の注意を払ったとしても、盲目的に行う施術ゆえの不確実さを完全に払拭できない治療であることを十分に理解してもらう必要があります。事前に血流障害が施術のリスクの一つであることの説明を受けて理解しているならば、それは施術の失敗ではなく、稀に生じた合併症の一つとの判断になります。
血流障害の予防対策
実際の施術時には、マイクロカニューレという針先が鈍針となっている特殊な針を使うことで、血流障害のリスク軽減を図ることがあります。しかしこのようにリスク軽減のため最大限の策を講じたとしても、リスクの完全回避にはならないことを認識しなければなりません。
血流障害が疑われたとき
①患者様が医師より血流障害のリスク説明を事前にうけていたか?
②患者様ご自身が血流障害の初期症状(患部周囲のうっ血、水疱形成など)に気づくことができ、早急にクリニックや医師へ連絡できるか?
③可及的速やかにヒアルロニダーゼ注射でヒアルロン酸溶解を行い血流再開のための処置を受けれるか?
などが重要になります。
まとめ
ヒアルロン酸注入はプチ整形治療といえど、決してそのリスクを軽視することはできません。ヒアルロン酸注入のリスクをしっかりと理解し、さらに緊急時に対応できる医師がいるクリニックを選ぶことが失敗を回避するためには重要なポイントになることかと思います。