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ドクターコラム

「直美(ちょくび)」の何が問題なの?

2025.09.07

コラム

大阪難波のMIYAフェイスクリニックの院長の宮里です。
この度は、美容医療業界で話題になっている「直美(ちょくび)」について、私の見解を踏まえて書かせて頂きました。
医師は、大学医学部を卒業し、医師国家試験に合格して医師免許を取得しても、すぐに一人前の臨床医として現場で活躍できるわけではありません。また、それを覆すような天才新人ドクターは存在しません。
そのため、医師免許を持ち、臨床研修(初期研修+後期研修)を終えない限り、医師として必要とされる医療知識、スキルが最低水準にも達していないと評価されることになります。

「新卒医師の教育プログラム」とは

新卒医師の教育プログラムは、以下の流れが通常となります。
初期臨床研修(2年) →専攻医(後期研修:3~5年) →専門医取得し、一人立ちした医師へ成長

新卒医師の第一ステップとなる初期研修の2年間は、短いスパンで複数の診療科を回って、各科医師の仕事を学び、基本的な素養を習得します。

 

形成外科専門医,美容外科医,宮里院長

なぜ「直美(ちょくび)」が増えるのか?

私は、初期研修は学生実習の延長線上に行う修行のようなものと思っています。

実際に患者様の治療を一人で任されるような実力がないため初期臨床研修が終わると、後期研修に移り、今度は一人前の専門医になれるための修練を積むことが必須と思っています。
ところが、その研修の背景には、「過酷な労働環境」や、「それにみあわない低い報酬」などを理由に、昨今は初期研修を終えてすぐに、もしくは後期研修中に進路変更し、保険診療から自費診療の美容クリニックの門をたたく医師たちが加速的に増えるようになりました。

このような医師を、「直ぐに美容医療にすすむ」という意味で、「直美(ちょくび)」といわれるようになりました。
そこで、こうした直美の増加は、医療全体の質の低下や、患者様が安心して美容医療を受けられない環境の要因、さらに保険診療を担う医師の減少などの社会問題として取り上げられるようになりました。

医療業界が「直美」に注目

美容診療においても、人の身体にメスを入れる行為、針を刺す行為、あるいは投薬するなどは医療行為であるため、保険診療と変わりなく、医療事故につながる患者様への不利益を与える可能性、つまりリスクを伴うことになります。
当然ながら、医師は医療事故などを起こさないようリスクを回避するため、日々、医療知識を蓄え、スキルを磨くことの努力を惜しみません。

そのため、医師は専門性のことだけでなく、その中で最低限の救急対応、病気の診断・治療、合併症管理、全身の健康管理など、総合的な医療知識を身につけることが必要となります。しかしながら、リスクは減らせてもゼロにすることは現実的にできないため、この努力に終着点はありません。

そうなると、直美のドクターは、そのような修練や臨床経験が明らかに少なく不足しているため、医療事故やトラブルを引き起こすリスクは必然的に高まります。もしトラブルを適切に対応ができない医師ならば、患者様の生命までも脅かす最悪の事態になりかねないことは想像するに容易いかと思います。

医療業界を取り巻く「直美(ちょくび)」問題について、多くの識者の方がコメントを発信されていますが、女子プロレスラー・ジャガー横田さんの夫で医師の木下博勝先生が2025年8月25日のインスタグラムで、以下のような私見(一部抜粋)を述べられています。

「個人的には、国立も私立も医学部には国から補助金が投入されています。6年間で考えると多額です」

そして、その対策として

「憲法で保障されている、職業選択の自由、に違反するかも知れませんが、国家試験取得後は一定期間、保険診療や研究業務に従事する。違反する場合は、投入された補助金を計算して、国に返納する。出来なければ、医師免許停止、かなり乱暴な意見とは承知しています(以下省略)」

確かに木下先生ご本人も認めるように過激発言かと思いますが、補助金の本来の目的を精査するならば、直美問題の対策の1つとして的を得たご意見で実に共感させて頂きました。

もし、直美を選択するドクターの動機や深層心理に、他人とは違う生命の尊厳や重みなどに関する「独自の倫理観?」、 経験を積まなくても難局を乗り越えられると思える「根拠なき自信?」、あるいは「自分の無知に気付けず危機感をもてない?」などがあるならば、もはや医師としての自覚の欠如であり、その人自身の問題です。

 

形成外科専門医,美容外科医,宮里院長

美容も医療として考える

直美であれ、専門医であれ、同じ医師です。人が他人の身体に触れさせて頂き、針を刺す、メスをいれる、体内に薬を投与することなど、医療行為でなければ法に触れる、非常におこがましい行為ですが、医師免許という国家資格のもと、それが医療行為として正当性が認められているだけです。

それゆえに、医師はそのことを肝に銘じて、自分に厳しく、患者様を守るための日々の診療を行うことが求められます。それができないことがあるならば、その人自身の問題であり、研修システムや社会の問題にするならばお門違いかと思います。
今は患者様が医師を選ぶ時代です。そして、今は医師がSNSを通じて自らをセールスする時代です。

上述したように、直美の医師や専門医など、全てが同レベルではありません。
同じ形成外科専門医であっても、美容医療においての経験の違いがあれば、対応能力に大きく差がでることは言うまでもありません。
また、美容医療の中で外科知識があればプチ整形においても精度かつ安全性があがり、患者様により正しい案内が可能となりますが、プチ整形しか知らない(できない)直美ならば、1つ1つの施術に知識と経験がない分、施術の精度や安全性をあげることが難しく、患者様に全て正しい案内ができるとは思えません。

患者様ご自身が情報収集をして正しい判断を

そのことを理解して、患者様自身が、医師選びにおいて、常に疑いの目をむけながら、見る目を養い、バランスよく判断し、自分にとって有益かつ、自分を守ってもらえる、本質を間違わないドクター選びを心がけてもらいたいと思います。

本ページを監修した
医師情報

<医師名>

院長 宮里裕

院長 宮里裕

<資格>

  • 医学博士
  • 日本形成外科学会専門医
  • 日本美容外科学会(JSAPS)正会員
  • 医学博士
  • 日本形成外科学会専門医
  • 日本美容外科学会(JSAPS)正会員

<医師の経歴>

1997年
近畿大学医学部 卒業
2003年
近畿大学大学院医学研究科 卒業。同附属病院形成外科(医学部講師)及び麻酔科、他関連病院形成外科(部長)等を経て、美容外科の基礎となる形成外科、麻酔科の診療実績を積み重ねる。
2008年
リッツ美容外科 大阪院
2011年
恵聖会クリニック 心斎橋院院長
2019年2月
MIYAフェイスクリニック 開院

<所属学会情報>